こんにちは。株式会社アストです。
早速ですが、結論から。マンションの大規模修繕工事でも、アスベスト(石綿)の事前調査は義務です。工事の規模は関係ありません。
「うちは外壁の塗り替えと防水だけなのに?」と思った理事さん・修繕委員さん向けに、よく聞かれる5つの疑問に順番に答えていきます。
疑問①:外壁塗装や防水だけでも調査が要るの?
要ります。
大気汚染防止法では、建築物を解体・改造・補修する作業を行うときは、あらかじめ石綿の使用の有無を調べる「事前調査」が必要です(環境省)。厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトも、解体・改修工事は規模の大小にかかわらず、工事に係る部分の全ての材料について事前調査を行う必要がある、としています。大規模修繕工事は建築物の「修繕」なので、対象です。
理由は単純です。石綿は2006年(平成18年)9月から製造・輸入・使用などが禁止されていますが、それ以前に着工した建物には使われている可能性があります。吸い込むとじん肺・肺がん・中皮腫などの原因となる可能性があることも知られています(同ポータルサイト 発注者向けページ)。
なお、環境省・厚生労働省のマニュアル(付録Ⅰ 事前調査の方法)では、2006年9月1日以降に着工した建物は原則として石綿含有なしと判断できる、とされています。築年数が浅いマンションでも調査そのものは要りますが、書面で着工日を確認するのが第一歩です。
疑問②:誰が調べるの?管理組合も何かするの?
調べるのは施工業者(元請)です。管理組合が自分で調べる義務ではありません。
ただし、調査を行う人には資格が要ります。2023年(令和5年)10月1日以降に着工する建築物の解体・改修工事では、「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者が事前調査を行うことが義務付けられました(同ポータルサイト 着工前手続き)。資格には「一戸建て等」の区分もありますが、こちらは一戸建て住宅と共同住宅の住戸内部に限られます。外壁や屋上といった共用部の調査は、特定・一般の建築物石綿含有建材調査者などの仕事です。
管理組合(発注者)の側にも、法令で「配慮」が義務付けられています。
・設計図書や建築確認申請の副本など、石綿の有無を確認するうえで有用な情報を施工業者に提供すること
・事前調査の費用と、石綿が見つかった場合の除去等の費用を適正に負担すること
・工期や作業方法について、施工業者が法令を守って調査・工事できるよう配慮すること
竣工図と前回工事の記録を探しておくだけで、調査はぐっとスムーズになります(^^)
▼ 関連記事
大規模修繕工事の確認申請|要否の分かれ目と注意したい5つの工事
疑問③:何をどう調べるの?
順番は「書面 → 目視 → 分析」です。
①書面調査… 設計図書などで、石綿含有建材の使用場所・着工日・建材の種類を確認する
②目視調査… 現地で建材の製品名や製品番号を確認し、石綿を含む建材を特定する
③分析調査… ①②で分からない建材は試料を採取して分析機関に依頼する
分析せずに「石綿あり」とみなして工事することもできます。ただし国土交通省のマンション改修マニュアル(令和8年3月改訂)によると、みなした場合は、必要となる可能性がある措置のうち最も厳しい措置を講じなければなりません。
では、大規模修繕工事で気にする建材は何か。同マニュアルは、石綿対策が主に関係する改修工事として「屋根防水改修工事」「塗装仕上げ改修工事」「内壁・内装改修工事」を挙げています。石綿含有建材の表では、外壁に塗られた仕上塗材(しあげぬりざい)と、その下の下地調整塗材が例に入っています。
外壁の塗り替えで既存の塗膜を削ったり剝がしたりする場合、まさにここが調査の対象です。環境省・厚生労働省のマニュアルも、仕上塗材の改修で下地調整塗材層まで削り取るなら、下地調整塗材層も別途調査する、としています。
▼ 関連記事
大規模修繕工事の防水工事|屋上と床で違う工法と全面改修の要否
疑問④:調べた結果はどうなるの?
結果は「行政への報告」「現場での掲示」「発注者への報告」の3つに使われます。
まず行政への報告。請負代金(税込)100万円以上の改修工事では、石綿があってもなくても、事前調査の結果を労働基準監督署と都道府県等に報告する義務があります(2022年4月から、石綿事前調査結果報告システムについて)。この100万円は工事全体の請負代金で判断し、材料費と消費税を含み、事前調査の費用は含みません(環境省)。報告は原則、電子システムで申請し、両方への報告を1回で済ませられます。
次に現場での掲示。事前調査結果の記録は3年間保存し、作業場所に備え付けて概要を掲示する必要があります。金額の条件はありません。
そして発注者への報告。大気汚染防止法に基づき、施工業者から発注者へ事前調査の結果報告書を出すことになっています。厚生労働省・国土交通省・環境省の3省リーフレットも、調査終了後は報告書の提出を求めましょう、と発注者に呼びかけています。理事会で受け取って保管してください。
1つだけ、管理組合が自分で手続きをする場面があります。吹付け石綿や石綿含有の保温材・断熱材・耐火被覆材が見つかった場合は、発注者である管理組合が作業開始の14日前までに自治体へ「特定粉じん排出等作業実施届出書」を出す必要があります。外壁の仕上塗材は、この法律上の届出の対象ではありません(自治体の条例で求められる場合はあります)。
疑問⑤:石綿が見つかったら工事はどうなるの?
石綿があっても工事はできます。ただし、やり方が変わります。
マンション改修マニュアルの表では、仕上塗材は発じん性が「比較的低い」建材に整理されています。それでも、ディスクグラインダーなどで削り取る工事では作業場の隔離が必要です(2021年4月から、改正石綿則のポイント)。同マニュアルは、剝離剤で軟化させて手作業で剝がし、散水しながら飛散を抑える「剝離工法」を対策工法の1つに挙げています。
石綿が含まれる工事では、作業の実施状況を写真等で記録して3年間保存することも義務です。撮影を許可するのも発注者の配慮の1つです。
費用は、事前調査費も除去等の費用も発注者が適正に負担することになっています。事前調査費の項目例は、書面調査・現地調査・裏面確認調査・分析調査・総合調査報告書・諸経費。見積書に事前調査費が計上されているか、調査資格を持っているかを業者に確認する、というのが3省リーフレットの助言です。
余談ですが、石綿則(石綿障害予防規則)は2005年にできた規則です。事前調査などが実施されていない事例が散見されたため2020年7月に改正され、ここまで書いた義務が順次施行されました。ルールが厳しくなったのは、ごく最近なのです。
理事会で押さえる5つの答え
・大規模修繕工事でも事前調査は義務。規模は関係ない
・調べるのは施工業者の有資格者。管理組合は図面を渡し、費用と工期に配慮する
・書面→目視→分析の順。外壁の仕上塗材と下地調整塗材が主な対象
・請負100万円以上なら行政へ電子報告。金額にかかわらず現場に掲示され、発注者にも報告書が届く
・見つかっても工事は進む。隔離や剝離工法で飛散を抑え、写真で記録する
次の理事会で「事前調査費は見積のどこに入っていますか?」と聞いてみてください。それだけで、法令を守る業者かどうかが見えてきます!!
▼ アスベスト調査・除去のご相談・お見積りは無料です
株式会社アストは、石綿作業主任者をはじめとする有資格者の専門チームで、調査のご相談から除去・適正廃棄まで一貫して対応しています。福岡で大規模修繕工事をご検討中の管理組合様・オーナー様は、お気軽にご相談ください。
お問い合わせフォームはコチラ
お電話でのご相談: 092-812-6411(平日 8:00~17:00)
▼ 関連記事
アスベスト除去工事
大規模改修工事トラブルあるある【アスベスト問題】
大規模修繕工事の確認申請|要否の分かれ目と注意したい5つの工事
大規模修繕工事の防水工事|屋上と床で違う工法と全面改修の要否
大規模修繕工事の流れ