理事会で工事の話がまとまって、いよいよ総会の議案書を作る段になったとき。「これは普通決議でいいのか、4分の3の賛成が要るのか」で手が止まることがあります。

先に結論を書きます。国土交通省のマンション標準管理規約では、外壁補修や屋上防水といった計画修繕の工事は普通決議で実施可能と整理されています。ただしこれは国のひな形の整理であって、実際の要件を決めるのはお住まいのマンションの管理規約です。

しかも改正区分所有法の施行で、決議要件と定足数の考え方が変わったところがあります。順に見ていきます。

計画修繕の工事は普通決議と整理されている

まず、多くの管理組合が気にする点から。

国土交通省の令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)のコメントには、各工事に必要な総会の決議について、こんな一文があります。

「計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給排水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる」

大規模修繕工事でよく出てくる工種が、ほぼそのまま並んでいます。窓枠・窓ガラス・玄関扉等の一斉交換工事も普通決議で実施可能と考えられる、との整理です。

ただし、同じコメントには大事な但し書きが続きます。

「基本的には各工事の具体的内容に基づく個別の判断によることとなる」

工事の名前で決まるのではなく、中身で決まる。ここは押さえておきたいところです。

大規模修繕に関係する決議は3つに分かれる

大規模修繕工事に関係する決議の区分は3つです。

①普通決議
議決権総数の過半数を有する組合員が出席し、出席組合員の議決権の過半数で決します(第47条第1項・第2項)。計画修繕の工事はここに入ると整理されています。

②3分の2以上の決議
組合員総数の過半数であって議決権総数の過半数を有する組合員の出席を要し、出席組合員及びその議決権の各3分の2以上で決します(第47条第4項)。主な対象は、敷地や共用部分等の設置・保存の瑕疵によって他人の権利等が侵害され、または侵害されるおそれがある場合の瑕疵の除去に必要となるもの、高齢者・障害者等の負担を軽減するために必要となるもの、建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の共用部分の復旧です。

③4分の3以上の決議(特別決議)
出席の要件は②と同じで、出席組合員及びその議決権の各4分の3以上で決します(第47条第3項)。規約の制定・変更・廃止のほか、敷地及び共用部分等の変更がここに入ります。ただし「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」と、耐震改修促進法第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修は除かれます。

①と③を分ける線引きは、この「形状又は効用の著しい変更」を伴うかどうかです。著しい変更を伴わない共用部分の変更は、区分所有者及び議決権の各過半数によることとされている、と同じコメントが説明しています。

耐震改修を例にすると、分かれ方が見えてきます。コメントは、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事や、耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議、基礎部分等を切断して免震構造化を図る工事や加工が大きいものは3分の2以上、という整理です。

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改正区分所有法で決議要件と定足数が変わった

ここは、規約そのものに関わる話です。

国土交通省の管理規約の改正を行う場合の手続の留意点は、今回の標準管理規約の改正が「主に令和8年4月1日から施行される改正区分所有法」の改正事項を反映したもので、特に影響が大きい事項として規約の改正等に係る総会の成立要件(定足数)及び決議要件の変更が含まれる、と説明しています。

標準管理規約のコメントのほうは、4分の3以上の特別多数決議について出席者による決議を可能とするとともに、定足数の規定が設けられ、組合員総数及び議決権総数の各過半数の出席が必要とされることになった、と書いたうえで、「特に留意が必要である」と念を押します。国のコメントにしては、なかなか強い言い方です。

念を押すだけの理由もあります。先ほどの留意点によると、各マンションの規約のうち改正法の規定に抵触するものは、施行日以降、効力を失うこととされています。規約を直していなくても、抵触する部分は施行日から効力を失っている、ということです。

一方、標準管理規約が第47条第1項の総会成立の定足数を「議決権総数の半数以上」から「議決権総数の過半数」に見直した点は、ひな形そのものの改正です。コメントも「令和7年の標準管理規約改正前まで」の値からの見直し、と書き分けています。

標準管理規約に沿って総会を開くときの確認は、こうなります。

・どの決議をする場合でも、議決権総数の過半数の出席を確認する
・特別決議の事項が含まれる場合は、それに加えて組合員総数の過半数の出席も確認する

何人になるかは、規約の議決権の定め方によって変わります。なお、住戸数の少ない小規模マンション等では、総会成立の定足数を改正前と同じ「議決権総数の半数以上」とすることも考えられる、ともコメントは添えています。

議案を作る前に確かめること

確かめておきたいのは3つです。

①お住まいの管理規約
標準管理規約は国のひな形にすぎません。決議要件を決めるのは各マンションの規約なので、まずは手元の規約の「総会の会議及び議事」の条を開いてください。

コメントには、大規模修繕工事のように多額の費用を要する事項については、組合員総数及び議決権総数の過半数で、又は議決権総数の過半数で決する旨を規約に定めることもできる、とあります。規約の側で要件を重く定めておくこともできる、ということです。

②議案の要領を期限までに通知する
標準管理規約は、総会を招集するには少なくとも会議を開く日の2週間前までに、日時・場所・目的及び議案の要領を示して通知を発しなければならない、としています。そのうえで総会では、あらかじめ通知した事項についてのみ決議できます。

当日の思いつきで議案を差し替えて採決、とはいきません。なお通知の日数は規約によって違うことがあるので、ここも手元の規約でご確認ください。

また、敷地や共用部分等の変更を3分の2以上の決議で決しようとするときは、その旨と該当する理由も通知しなければならない、という定めもあります(第43条第4項)。

③積立金の取崩しも議決事項
第48条は、長期修繕計画の作成又は変更と、特別の管理の実施およびそれに充てるための資金の借入れ・修繕積立金の取崩しを、総会の決議を経なければならない事項に挙げています。工事をやるかどうかだけでなく、お金の出し方もセットで議案にする必要があります。

議案書の前に管理規約を開く

計画修繕の工事は普通決議で実施可能、というのが標準管理規約の整理です。ただし工事の中身による個別判断であり、最終的な要件はお住まいのマンションの規約が決めます。

2026年4月の施行で定足数の考え方が変わった点も含めて、議案書に手を付ける前に、規約の総会の条をもう一度読んでおくと安心です(^^)

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