見積書に「屋上防水 かぶせ方式」「バルコニー床 ウレタン塗膜防水」と防水の項目が並んでいる。屋上は全部やり替えなくていいの? 床とは工法が違うの?

そんな疑問を持った理事さん・修繕委員さん向けの記事です。

先に結論を言うと、防水工事は屋上と床で考え方が違います。屋上は「全面改修が本当に要るのか」をまず判断する工事、床は12~15年の周期で修繕していく工事。防水でつまずきやすい3つの思い込みを、国土交通省の資料をもとに順番にほどきます。

なお株式会社アストは、福岡で大規模修繕工事と防水工事を手がける会社です。施工する側が書く記事なので、国の資料が「やりすぎ」と指摘している点も省かずに書きます。

思い込み①「防水工事といえば屋上」

屋上だけではありません。

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)の記載例では、防水は次の部位に分かれています。

屋根防水… 屋上防水(保護)、屋上防水(露出)、傾斜屋根、庇・笠木等防水
床防水… バルコニー床防水、開放廊下・階段等床防水

庇(ひさし)や笠木(かさぎ)の天端、バルコニーや廊下・階段の床まで防水の対象です。同じ国土交通省のマンション改修マニュアル(令和8年3月改訂)は、これらの防水は躯体(くたい)への水の浸入を防ぎ、鉄筋やコンクリートを守る役割だと説明しています。

お金の面でも大きな項目です。国土交通省の令和3年度の実態調査では、建築系工事の内訳は外壁関係が49.4%、次いで防水関係(屋根防水・床防水)が32.0%。同じ調査の報告書によると、外壁塗装の次に割合が高いのは屋根防水ではなく床防水でした。

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思い込み②「時期が来たら屋上は全面やり替え」

マンション改修マニュアルは、屋根防水改修を外壁改修と並ぶ基幹工事としたうえで、こう書いています。「計画修繕の時期が来たとしても、全面的な防水改修を行う必要があるか否かをまず判断することが重要です」

さらに、いわば「やりすぎ」の例を2つ挙げています。

露出アスファルト防水… 一部補修と端部のコーキング打増し、保護塗装だけで足りることも多いのに、1回目の大規模修繕で塗膜防水やシート防水に改修してしまうケース
保護アスファルト防水(コンクリートの押え層がある防水)… 長期の耐用年数が期待でき、漏水していなければ必ずしも全面改修は不要なのに、部分補修で足りるところを全面改修しているケース

つまり、屋上を診ずに「全面」と決めるのは早いということです。逆に、漏水の原因が特定できない場合は全面撤去も選択肢に加えて検討する、ともマニュアルは書いています。

改修するときのやり方は2つです。

全面撤去方式… 既存の保護層や防水層を撤去してから新しい防水を施す
かぶせ方式… 既存防水層の劣化部だけ直し、その上から新しい防水を施す

見積書の「かぶせ」はこれです。既存には長年の水分が含まれているので、マニュアルはかぶせ方式を基本的に絶縁工法とし、脱気装置(水蒸気を逃がす部品)を付けるとしています。広い面積を密着させて施工すると、閉じ込められた水分で新しい防水層が膨れるおそれがあるからです。

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思い込み③「防水工事はどこも同じ工法」

屋上と床では工法が別物です。

屋上は、新築時は主にアスファルト防水で、「保護」と「露出」があります。マニュアルによる1回目の大規模修繕の工法は次のとおりです。

・露出アスファルト防水… 健全なら保護塗装だけでも可。多くは「アスファルト防水増張り工法」か「シート防水機械的固定工法」
・保護アスファルト防水を全面改修する場合… おおむね「ウレタン塗膜防水通気緩衝工法」か「シート防水機械的固定工法」

(バルコニー・開放廊下・階段)は、マニュアルが4つの工法を挙げています。

ウレタン塗膜防水… 床では最も一般的。狭いところも施工しやすく、ローラーやコテで塗る
超速硬化ウレタン吹付… 機械で吹き付け、短時間で歩ける。周囲の養生に手間がかかる
塩ビシート貼り… 長尺塩ビ床シートを貼る。防水材というより床化粧材の要素が大きい
塩ビ床シート複合防水… ウレタン防水層の上に塩ビ床シートを貼る。防水性・美観性・遮音性に優れる

開放廊下は防音の点からクッション性が要るので、塗膜防水に長尺塩ビシートを併用する方法が採られています。ルーフバルコニーだけは、下の階が住戸なので屋根防水の改修に準じる扱いです。

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防水工事の周期は12~15年が目安

長期修繕計画作成ガイドラインは、外壁塗装や屋上防水を行う大規模修繕工事の周期を、仕様等により異なるものの12~15年程度としています。標準様式の記載例(参考値)では次のとおりです。

・屋上防水(保護・露出とも)… 補修・修繕 12~15年、撤去・新設 24~30年
・庇・笠木等防水、バルコニー床防水、開放廊下・階段等床防水… 修繕 12~15年

記載例の修繕方法を見ると、露出防水の12~15年の修繕は「保護塗装(トップコート塗り)」、床は「ウレタン塗膜防水」。周期が来るたびに大工事、ではありません。

ただし、この数字は参考です。ガイドラインは、修繕周期はマンションの仕様や立地条件に応じて設定し、見直しは劣化状況の調査・診断の結果に基づくことが必要としています。早過ぎれば不要な修繕、遅すぎれば劣化が進んで費用が増える。答えは屋上とバルコニーの現状にあります。

まずは屋上が「保護」か「露出」かを確かめてください

次の理事会までにやってほしいことを1つだけ挙げるなら、これです。

それは、屋上防水が「保護」か「露出」か、前回の工事で屋上に何をしたかを確認すること。長期修繕計画書か前回の工事記録に書いてあります。

これが分かれば、露出なら「保護塗装だけで足りる状態か」、保護なら「漏水していないのに全面改修になっていないか」と、見積書を読めるようになります。

防水は屋上だけではなく、時期が来たら全面やり替えでもなく、部位ごとに工法が違う。この3つを押さえておけば大丈夫です(^^)

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