キッチンの流しに流した水。そのあと、どこを通って建物の外へ出ていくかご存じですか?
多くのマンションでは、住戸の中の横向きの管(横引き管)を通り、パイプスペースの中の縦の管(立て管)に集まって外へ出ていきます。
先に結論です。排水管は、外壁や屋上防水の大規模修繕とは周期が違います。国のガイドラインの例では、今の管を生かす「更生」が19~23年、新しい管に替える「取替」が30~40年。取替のときは、住戸の中の配管(専有部分)をどうするかも先に決めておきたいところです。
ここでは国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインとマンション改修マニュアルをもとに、築年数の順に説明します。
排水管の周期は外壁や防水と違う
ガイドラインのコメントでは、外壁の塗装や屋上防水などを行う大規模修繕工事の周期は、部材や仕様で異なるものの12~15年程度とされています。
一方、同じガイドラインの修繕周期の例では、排水管はこうなっています。
・屋内共用雑排水管の更生:19~23年
・屋内共用雑排水管・汚水管・雨水管の取替:30~40年
・排水ポンプ:補修5~8年、取替14~18年
数字を並べると、1回目の大規模修繕の時期とはずれることが分かります。ガイドラインも、新築時に30年の計画を作った場合、給排水管の取替えは計画期間に入っていないことがあるので、見直しのときに注意が必要だとしています。
もちろん、これはあくまで例です。マニュアルによると、屋内の雑排水管が白ガス管(配管用炭素鋼鋼管)なら15~20年、汚水管が鋳鉄管なら30~40年が目安で、管の材料や維持管理の状況で周期は変わります。実際にいつ何をするかは、調査・診断の結果で判断します。
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築20年前後は更生を考える時期
最初に検討に上がるのが「更生(こうせい)」です。今ある管を取り替えずに使い続けるための工事で、ライニング工法などがあります。
マニュアルは、排水管の工事は取替えが中心としたうえで、配管の残存肉厚(管の厚みがどれだけ残っているか)があれば、更生工事も考えられると書いています。つまり、更生を選べるかどうかは管の傷み具合しだいです。
調べるときの注意点もあります。屋内の共用排水管でも、置かれている環境によっては管の外側から腐食が進んでいることがあるそうです。内側だけ見て安心しない、ということですね。
築30~40年は取替が中心になる
次の山が「取替(更新)」です。マニュアルでは、管と継手を耐久性・耐食性・耐震性の高いものに替えて長持ちさせ、維持管理しやすくすること、排水能力を高めることがポイントとされています。
古いマンションの雑排水管は、初期には鋼管とねじ込み式の継手が使われていました。その後、塩化ビニルで内側を覆った鋼管や、耐火性のある塩ビ管などが使われるようになっています。
取替のときに一緒に見直したいものも、マニュアルに挙がっています。
・通気管:水は流れませんが、結露や排水から出る硫化水素ガスなどで腐食し、パイプスペースの中で破断したまま気付かれないことがあります
・掃除口:台所・浴室・洗面所の排水管は詰まりや腐食で漏水事故の危険があるため、掃除口が無い・足りない場合は新設・増設します
・台所系統の鋳鉄管:排水に含まれる有機物などが原因の微生物の影響で腐食が早く進み、30~40年を待たずに対応が要るケースがあります
余談ですが、鋳鉄管から耐火塩ビ管に替えると、排水の音が大きくなることがあるそうです。管が新しくなったのに「音が気になる…」とならないよう、マニュアルは管の周りの遮音対策にも気を配るよう書いています。
取替の前に決めたい専有部分の扱い
ここは管理組合で先に話し合っておきたいところです。
国のひな形である標準管理規約では、雑排水管と汚水管は「配管継手及び立て管」が共用部分とされています。改修マニュアルの区分表でも、住戸の中の配管は専有部分とされています。実際の扱いは、お住まいのマンションの管理規約で確かめてください。
ところが古いマンションには、排水の横引き管が下の階の天井の中を通っているもの(スラブ下配管)があります。この場合、上の階の人がリフォームで管を替えようとすると、下の階の天井を壊して直す工事が必要になります。
そこでマニュアルやガイドラインは、共用の立て管を取り替えるときに専有部分の配管も一緒に取り替える方法を挙げています。別々にやるより費用が軽く済む場合があるからです。その場合に押さえておきたいのは次の3つです。
①長期修繕計画に、専有部分の配管の取替えをあらかじめ書いておく
②その費用を修繕積立金から出すことを管理規約に定める
③先に自分で工事を済ませた人への補償をどうするか考えておく
修繕積立金で直す範囲は、共用部分と構造上一体となった部分や共用部分の管理に影響する部分(いわゆる横引き配管など)にとどめ、つながっている室内の設備は各区分所有者の負担とするのが相当、というのがガイドラインの考え方です。
また、共用部分と構造上一体となった専有部分の配管を、共用部分と一緒に工事する必要がある場合は、あらかじめ規約に定めを設けておけば、専有部分の工事を伴っても総会の決議で決められる、とマニュアルは説明しています。
なお、立て管を替えるためにパイプスペースに面した住戸の壁をいったん壊して直す工事は、共用部分の工事に伴うものなので管理組合が費用を負担する、とガイドラインは説明しています。
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工事中の暮らしはこう変わる
住戸の中を通る排水管の工事は、外壁の工事と違って居住者の部屋に入る工事です。そのため居住者の在宅が必要で、工事の間は同じ系統の排水が使えない時間があります。
マニュアルは、取替工事の留意事項としてこんなことを挙げています。
・居住者への説明を繰り返し行い、理解を得る
・騒音と粉じんの対策を考える
・排水を止める時間は長くても朝9時から夕方6時までにして、早朝と夜はふだんどおり使えるようにする
床下のコンクリートを貫通している部分や、1階の土間の下に埋まっている部分など、住みながら取り替えるのが特に難しい場所では、一部に更生を組み合わせる工法もある、とマニュアルにあります。
まずは長期修繕計画の排水設備の行を見てください
排水管は、外壁や防水の12~15年とは別の周期で、更生は築20年前後、取替は築30~40年が国の例です。取替のときは専有部分の配管をどうするかを、規約と計画で先に決めておくと話が進めやすくなります。
次の理事会の前に、長期修繕計画の「排水設備」の行に更生と取替の年と金額が入っているかを確かめてみてください。空欄なら、計画の見直しで話題にするタイミングです(^^)
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