理事になって最初に渡された分厚いファイル。その中に「長期修繕計画」という、年ごとにマス目が並んだ表が入っていませんでしたか?

結論から言うと、長期修繕計画は大規模修繕工事の「予定表」と「お財布の根拠」をひとつにしたものです。ただし書かれた年に必ず工事をするわけではなく、5年程度ごとに見直して使う前提の計画です。

この記事では、国土交通省のガイドラインをもとに、大規模修繕工事との関係と、見直しのときに確かめたい5つのことをまとめます。

長期修繕計画は工事の予定表と積立金の根拠

長期修繕計画は、将来の修繕工事を計画して必要な費用を出し、月々の修繕積立金を決めるためにつくるものです(国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」)。

中身は次の5つで、これをもとに修繕積立金の額を出します。

①計画期間
②推定修繕工事項目(どこを直すか)
③修繕周期(何年ごとか)
④推定修繕工事費(いくらか)
⑤収支計画

ガイドラインは、この計画をつくる目的として「工事の内容・おおよその時期・概算の費用を明確にする」「積立金の額の根拠を明確にする」「あらかじめ合意しておいて工事を円滑に進める」の3つを挙げています。なお、ガイドラインは国が示す作成の指針で、実際の計画の中身はマンションごとに違います。

大規模修繕工事は、この計画に載る工事のひとつです。国の指針は大規模修繕工事を「建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事(全面的な外壁塗装等を伴う工事)」と定義しています。修繕周期を決めるときは、経済性などを考えて工事をまとめることも検討するとされています。

▼ 関連記事
大規模修繕工事の周期は何年?「12年」の根拠と国の最新データ

計画の年に必ず工事をするわけではありません

ガイドラインは、長期修繕計画は将来の工事の内容・時期・費用を確定するものではないと書いています。時期(周期)は「おおよその目安」で、立地条件などで変わることがあります。

では実際の工事はどう決めるのか。答えは事前の調査・診断です。ガイドラインは「計画修繕工事の実施の要否、内容等は、事前に調査・診断を行い、その結果に基づいて判断する」としています。

計画に書かれた年と実際に工事をする年は、診断の結果しだいでずれることがあるわけですね。

▼ 関連記事
大規模修繕工事の建物診断とは?時期・調べ方・費用の出どころ

多くのマンションは5年ごとに見直しています

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、長期修繕計画をつくっている管理組合は88.4%でした。

見直しの時期は「5年毎を目安に定期的に」が63.2%、「修繕工事の直後」が9.9%、「修繕工事の直前」が9.4%。見直しをしていないのは3.7%です。

国の指針も、計画は5年程度ごとに調査・診断をして見直すことが必要で、見直しにはおおむね1~2年かかるので計画的に、と書いています。見直しと併せて、修繕積立金の額も見直すとされています。

見直しで確かめたい5つのこと

手元の計画を開いて、次の5つを順に見てみてください。

①計画期間は30年以上あるか

ガイドラインは、計画期間を「30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上」としています。

令和3年9月のガイドラインの見直しで、既存マンションの計画期間の目安は25年以上から30年以上に変わりました(国土交通省の報道発表)。それより前につくった計画は、25年のままかもしれません。

②最後に見直したのはいつか

国が示すひな形(標準様式)では、総括表に「作成日」と「総会で議決された日」を書く欄があります。手元の計画がこの様式とは限りませんが、作成日や議決日を探して、目安の5年程度が過ぎていないかを見ます。

見直す理由としては、劣化の状況、新しい材料や工法、物価・工事費・消費税率の変動などが挙げられています。

③調査・診断の結果を反映しているか

見直しの前には、専門家が設計図書や修繕の履歴を調べ、現地を調べ、必要なら区分所有者にアンケートをとることが必要とされています。

見直した計画が、いつ・どんな調査の結果をもとにしているかを確かめます。

④工事の項目に漏れがないか

国のひな形(標準様式)では、仮設工事・屋根防水・床防水・外壁塗装等・鉄部塗装等から、給水・排水などの設備、昇降機、外構、調査・診断や設計・工事監理の費用まで、19の項目が並びます。実際の項目の立て方は計画ごとに違います。

同じ資料のコメントは、「計画期間の不足、推定修繕工事項目の漏れなどによる不適切な内容の長期修繕計画が見受けられます」と書き、それが積立金不足の原因になっているとしています。項目が空欄なら、「該当しない」のか「計画期間に入らない」のかが書かれているかを見ます。

▼ 関連記事
大規模修繕工事の排水管はいつ直す?更生・取替の周期と専有部分

⑤大規模修繕の年にお金が足りているか

基本は、計画期間の工事費の累計を、積立金の累計が下回らないように組むことです。

大規模修繕工事の年に一時的に下回るときは、その年に一時金の負担や借入れなどで補うことになります。また、見直しで工事費の累計が増えれば、必要な積立金も増えます。

▼ 関連記事
大規模修繕工事の借入|積立金不足で使える公的融資と5つの手順

見直しは理事会から総会へ

既存マンションでは、理事会や専門委員会で検討してから専門家に依頼して見直し、総会で決議します。見直しは単独で行う場合と、大規模修繕工事の直前または直後に行う場合があります。

総会の前には説明会などで区分所有者に説明し、決議後は議事録と一緒に配るなどして周知することが求められています。

ちなみに同じ調査で、区分所有者が「管理に関して取り組むべき課題」に「長期修繕計画の作成又は見直し」を挙げた割合は33.0%でした。気にしている方は、思っているより多いのかもしれません(^^)

▼ 関連記事
大規模修繕工事の決議要件|普通決議とされる工事と総会の定足数

長期修繕計画は見直して使う計画

長期修繕計画は、大規模修繕工事の時期と費用、そして積立金の額の根拠をまとめた計画です。書かれた年は目安で、実際の工事は調査・診断で決まります。

だからこそ5年程度ごとの見直しが欠かせません。計画期間・見直しの日付・調査の反映・項目の漏れ・大規模修繕の年の収支、この5つをまず確かめてみてください。

▼ 大規模修繕工事のご相談・お見積りは無料です
福岡で大規模修繕工事をご検討中の管理組合様・オーナー様は、株式会社アストまでお気軽にご相談ください。
お問い合わせフォームはコチラ
お電話でのご相談: 092-812-6411(平日 8:00〜17:00)

▼ 関連記事
大規模修繕工事の周期は何年?「12年」の根拠と国の最新データ
大規模修繕工事の費用相場|1戸あたりの目安と見積の比べ方
大規模修繕工事の流れを7ステップで解説|準備から竣工まで3~5年
大規模修繕工事の固定資産税減額|福岡市なら半額になる4つの条件
大規模修繕工事とは