「シーリング」。見積書や長期修繕計画で見かけるこの言葉は、JIS の規格名では「建築用シーリング材」といい、建物の目地(めじ)を埋めている、あのゴムのような材料を指します。

先に結論から書きます。シーリング工事は、外壁の目地やサッシまわりを埋めている止水材を打ち替える工事です。周期の目安は12~15年で、足場が要るので外壁の工事と同じ時期にまとめて行うのが一般的です。

「シーリング工事」という項目を見つけたら、中身は部位と工法で決まります。順番に見ていきます。

シーリングは目地を埋めて水と空気を止める材料

シーリング材の役割は、ひとことで言えば止水です。

国土交通省のマンション改修マニュアル(令和8年3月改訂)には、外壁などのコンクリートの打継ぎ目地や伸縮目地、アルミサッシなどの建具や金属製の金物とコンクリートの取り合い部分には「シーリング材による止水処理が施されています」と書かれています。

コンクリートの建物は一枚岩ではありません。打ち継いだ跡、ひび割れを誘発させるための目地、サッシとの隙間。継ぎ目が必ずあります。そこを埋めて、水と空気の通り道をふさいでいるわけです。

同じマニュアルは、シーリング材は紫外線や降雨、大気などの外的要因によって物性や機能が経年とともに劣化し、気密性や水密性が損なわれるとともに、変退色や汚染による美観の低下を生じる、としています。

だから、劣化した部分は打ち替えることになります。

マンションのどこにシーリングが入っているか

打ち替える場所は、思っているより多いです。

マニュアルがシーリング改修工事の主要部位として挙げているのは、次の7か所です。

・サッシまわり
・コンクリート打継目地
・PCa(プレキャストコンクリート)板目地
・スリーブ周り
・庇(ひさし)等の入隅部
・金物端部等
・タイル目地

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)でも、推定修繕工事項目「⑥シーリング」の部位は「外壁目地、建具周り、部材接合部等」、工事区分は「打替」と整理されています。

自分の住戸で一番見つけやすいのは、窓サッシのまわりです。枠と壁の境目に細い帯状の材料が入っているのが、近くで見ると分かります(^^)

国の仕様書が分ける4つの工法

工法名は、既存のシーリング材をどう扱うかで決まります。

国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版は、シーリングの改修工法を4種類に分けて工程を定めています。官庁の建物向けの仕様書で、マンションの民間工事に直接適用される基準ではありませんが、工法の分け方を知る手がかりになります。

①シーリング充填工法

既存材の除去はせず、下地処理をして新しいシーリング材を充填します。

②シーリング再充填工法

既存のシーリング材を除去してから充填し直します。仕様書では、目地の被着体に沿ってカッター等で切込みを入れて可能な限り除去し、バフ掛け・サンダー掛け・清掃用溶剤のいずれかで清掃するとされています。

③拡幅シーリング再充填工法

既存材を除去したうえで、ダイヤモンドカッター等を使って目地そのものを所定の形状まで広げてから充填します。

④ブリッジ工法

既存材を残したまま、その上に橋を架けるように新しいシーリング材を盛る工法です。ボンドブレーカーを既存シーリング材が完全に隠れるように張り、エッジング材を張り付けて充填し、硬化後にエッジング材を取り除きます。

4つに共通する工程は「下地処理」と「新規シーリング材の充填」の2つだけ。既存材を撤去するか、目地を広げるか、が分かれ目です。

なお、マンション改修マニュアルのほうは「撤去再充填工法、拡幅再充填工法、ブリッジ工法、新設工法(既設目地/新規目地)等」と呼んでいます。資料によって呼び名が少し違うので、見積書の工法名がどれに当たるかは施工会社に確かめてください。

同マニュアルには、剥離箇所・破断・軟化・硬化・表層裂傷などの劣化状況により、適切な工法を選択する必要がある、と書かれています。見積書に工法名があったら、なぜその工法なのかも聞いてみてください。

なぜ外壁工事と同じ時期に行うのか

理由は足場です。

マンション改修マニュアルはシーリング改修工事の修繕周期を12~15年周期とし、「材質により耐用年数が異なりますが、仮設足場を必要とするため、通常、外壁工事と同時期に行います」と書いています。長期修繕計画作成ガイドラインの修繕周期の例でも、⑥シーリングは12~15年で「打替」です。

外壁目地もサッシまわりも、地上からは手が届きません。シーリングのためだけに足場を組めば、足場代がまるごと余計にかかります。

国土交通省の令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査によると、総工事金額の内訳で「仮設工事」は22.8%を占めています。足場は、それくらい大きな買い物です。

だからシーリングは、外壁塗装や防水と一緒に、足場のあるうちに片付ける。同じ調査で建築系工事の内訳を見ると、「外壁関係(外壁塗装・外壁タイル・シーリング工事)」が49.4%で最も高くなっています。

なお、周期はあくまで目安です。ガイドラインは、修繕周期はマンションの仕様や立地条件等に応じて設定し、見直しの際は建物の劣化状況などの調査・診断の結果に基づいて設定することが必要、としています。

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打替えの前後で確かめておきたいこと

気にしたいのは、材料の相性と天候の2つです。

ひとつめは、シーリングの上に塗装をするかどうか。マンション改修マニュアルは、塗料とシーリングの相性によってはブリージング現象(シーリング材の一部の成分が分離して表面に滲み出し、塗装材に浸透して変色する現象)が起こる場合があるとしています。材料の相性を確認し、必要に応じて防止用のプライマーを塗るなどの対策が要ります。

シーリング材にはシリコーン系、変成シリコーン系、ポリサルファイド系など複数の種類があり、それぞれメリット・デメリットがあるため適材適所で使い分けられます。マニュアルは、種類の選定にあたっては製造業者に事前に問い合わせ、十分に確認することが必要としています。

余談をひとつ。マニュアルによると、耐久性・耐候性がいちばん優れているのはシリコーン系ですが、目地周辺を汚染させることがあるため、使用箇所は金属・ガラス間などに限られます。いちばん良い材料を全面に使えばいい、とはならないのが面白いところです。

ふたつめは天候です。公共建築改修工事標準仕様書では、降雨や多湿などで結露のおそれがある場合は作業を中止する、プライマー塗布時や充填時に被着体が5℃以下または50℃以上になるおそれがある場合も中止する(保温や遮熱の措置を講じる場合を除く)と定められています。

シーリングの日に雨が降って作業が飛ぶのは、サボっているからではありません!! 国の仕様書がわざわざ中止と定めるくらい、天候と気温が仕上がりに関わる作業なのです。

同じ仕様書は、施工後に目地へ正しく充填されているかを目視で確認し、シーリング材の硬化と接着の状態を目視と指触で確認する、とも定めています。

ここまでの要点

・シーリング工事は、外壁目地・サッシまわり・タイル目地などを埋めている止水材を打ち替える工事
・国の資料での周期の目安は12~15年。足場が要るので外壁工事と同時期に行うのが一般的
・国の仕様書の工法は充填/再充填/拡幅再充填/ブリッジの4つ。既存材を撤去するか、目地を広げるかが違い
・工法は劣化の状況に応じて選ぶもの。見積書に工法名があれば理由を聞く
・上から塗装する場合は材料の相性、施工日は気温と天候の条件がある

次の一歩として、お手元の見積書の「シーリング」の行に、工法名が書かれているかを確かめてみてください。書かれていれば、どの部位にどの工法を当てるつもりなのかまで踏み込んで質問できます。

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