2005年3月20日、福岡県西方沖でマグニチュード7.0の地震が起き、福岡市の東区・中央区で震度6弱を観測しました。福岡市の記録によると、市街地では都市型マンションの共用部分などに大きな被害が出ています(福岡市 西方沖地震20年特設サイト)。

そして福岡の警固断層帯(南東部)は、地震調査研究推進本部の評価でマグニチュード7.2程度の地震が想定され、30年以内の発生確率は0.3~6%とされています。

先に結論です。大規模修繕工事と耐震補強は目的の違う別の工事ですが、一緒に検討・計画することはできます。そのために管理組合が確認しておきたいことが4つあります。順番に見ていきましょう。

大規模修繕工事と耐震補強は目的が違う

大規模修繕工事は、外壁や防水など傷んだ部分を直す工事です。一方の耐震補強は、建物の強さや粘り強さを高める工事です。

国土交通省のマンション改修マニュアル(令和8年3月改訂)もこの2つを分けて説明しています。計画修繕(大規模修繕)の工事項目は建物の初期性能をもとに決まるので、それだけでは既存性能のグレードアップにとどまる。耐震化は工事項目を横断した総合的な検討が必要で、耐震補強工事は「大規模な改修工事」に当たる、という整理です。

ただし同じマニュアルには、耐震改修などを大規模修繕に合わせて検討・計画する場合もある、とも書かれています。外壁の補修と柱の補強を同じ時期に進める、という考え方です。

①建築確認の日付は昭和56年5月31日以前か

最初に確かめるのは、竣工年ではなく建築確認の日付です。

現行の新耐震基準が適用されたのは1981(昭和56)年6月1日。マニュアルは、それ以前に建築確認申請をしたマンションは現行の耐震基準を満たしていないことがあるため、耐震診断を行うことが重要だとしています。福岡市の補助制度も「昭和56年5月31日以前に建築確認を得て着工した」ものを旧耐震基準として扱っています。

確認済証や竣工図書を引っ張り出して、日付を見てみてください。

ちなみに、中低層の壁式構造(柱や梁ではなく壁で支える構造)は、旧耐震でも一般に耐震性が高いと考えられています。それでも躯体や材料の劣化で建てたときより性能が落ちていることがあるので、マニュアルは壁式でも確認しておくことを勧めています。

②耐震診断は済んでいるか

日付が昭和56年5月31日以前なら、次は耐震診断です。

「診断は義務なの?」と気になりますよね。分譲マンションの場合は努力義務です。平成25年の耐震改修促進法の改正で、旧耐震基準で建てられたすべてのマンションに耐震診断の努力義務が課されました(国土交通省 マンション耐震化マニュアル)。診断が「義務」で結果の公表まで求められるのは、病院・店舗・学校などの大規模建築物と、自治体が指定した緊急輸送道路沿いの建物などです(国土交通省 耐震改修促進法の概要)。

義務ではなくても、診断をしないと補強が要るのかどうかが分かりません。マンションで採用される第2次診断では、構造耐震指標「Is」が0.6以上(かつ保有水平耐力の指標qが1.0以上)なら倒壊の危険性が低い、Isが0.3未満(またはqが0.5未満)なら危険性が高い、と判定されます。この数字が、補強の要否と規模を決める出発点になります。

福岡市には診断費用の補助があります。昭和56年5月31日以前に建築確認を得て着工した建築物が対象で、費用の3分の2以内(面積に応じた限度額あり)。令和8年度からは、共同住宅・病院だけだった対象が旧耐震の全建築物に広がりました(福岡市 建築物の耐震診断費補助事業)。

③どの工法で直すか

診断で耐震性が足りないと分かったら、補強の計画に進みます。

マニュアルは耐震改修のねらいを4つに分けています。

・強度の向上(枠付き鉄骨ブレースの挿入、RC壁の増設 など)
・靭性能(粘り強さ)の向上(柱に鋼板や連続繊維を巻く など)
・構造上のバランスの改善(耐震スリットの新設 など)
・地震力の低減(制震機構の組み込み、免震構造化 など)

住みながらの工事で気になるのは居住者への影響です。たとえば枠付き鉄骨ブレースの補強では、柱や梁をハツる作業とアンカーを打つときに騒音・振動・粉塵が出ます。住戸内に補強部材を置く場合は、仮住居への移動が必要になることも。どの工法を選ぶかは、診断結果だけでなく「住みながら工事できるか」も判断材料になります。

弊社では、柱に炭素繊維を貼るSR-CF工法、補強プレートを貼るCFラミネート工法、柱を包帯のように覆うSRF工法、ブロックを積んで耐震壁をつくる3Q-wall工法の4つを扱っており、大規模修繕工事と併せた耐震補強にも対応しています。

④決議と手続きと補助金の段取り

最後は、工事を決めるまでの段取りです。ここは大規模修繕工事と少し違います。

まず総会の決議。柱や梁に炭素繊維シートや鉄板を巻く補修のように、構造への加工が小さい工事は「軽微変更」で、出席した区分所有者と議決権の各過半数の普通決議です。免震化や加工の大きい耐震部材の設置は「著しい変更」に当たりますが、耐震改修は区分所有法17条5項により出席者の各3分の2以上で決議できると、マニュアルは整理しています。さらに、所管行政庁から耐震改修促進法25条の「耐震改修の必要性に係る認定」を受けると、著しい変更でも普通決議に緩和されます。この認定の申請には耐震診断が済んでいることが前提です(決議の割合はいずれも規約に別段の定めがある場合を除きます)。

次に建築確認。耐震補強は確認申請が必要になる場合が多いとマニュアルに書かれています。ただし耐震改修計画の認定を受ければ建築確認が不要になり(完了検査は必要)、既存不適格の特例も受けられます。

そして補助金。福岡市では、3階建て以上かつ延べ面積1,000㎡以上の旧耐震共同住宅(ほかにも要件あり)を対象に、耐震設計は住宅部分の費用の3分の2以内(1戸につき5万円上限)、耐震改修工事は工事費の3分の1(1戸につき40万円上限、別途の算式あり)の補助があります(福岡市 共同住宅の耐震化に向けた支援について)。工事後は、要件を満たせば翌年度分の固定資産税の減額もあります。

気をつけたいのは順番です。申請は着手の概ね1か月前まで、そして交付決定の通知が来る前に契約すると補助の対象外になります。予算にも限りがあるので、工程を決める前に福岡市の建築物安全推進課(092-711-4580)へ相談しておくと安心です。

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お住まいのマンションの建築確認の日付をご存じですか?

①建築確認の日付 → ②耐震診断 → ③工法 → ④決議・手続き・補助金。大規模修繕工事の検討と並べて進めれば、同じ時期に耐震補強を計画することができます。

国の数字では、住宅の耐震化率は令和5年で約90%(国土交通省 住宅・建築物の耐震化の現状と目標)。残りの1割に自分のマンションが入っていないか、まずは①の日付を一枚めくってみてください。西方沖地震から20年あまり、次の揺れが来る前に…というのが私たちの本音です(^^;)

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