報告書に「タイル浮き」、見積書に「アンカーピンニング」。そんな言葉に戸惑っている管理組合の理事さん向けの記事です。

先に結論です。浮いた所の補修は、ピンや樹脂で「留める」か、剥がして「張り替える」かの大きく2通りです(外壁全体の剥落を防ぐ全面改修という選択肢もあります)。どちらにするかは、症状(浮き・欠損・ひび割れ)と、どの層で浮いているか、新築時のタイルの張り方で決まります。

ここでは国土交通省のマンション改修マニュアルと、国の公共建築の工事で使う公共建築改修工事標準仕様書をもとに説明します。

浮いたタイルは放っておけない

マニュアルは、タイルの浮きやひび割れを放っておくと、剥落による人身事故やコンクリートの耐久性の低下、住戸内への漏水の原因になるとしています。

そのため、全面打診調査で浮きが見つかった箇所は「直ちに剥離防止のための改修が必要」とまで書かれています。

調査の頻度は建築基準法の定期報告制度で決まっていて、国土交通省の解説によると、おおむね10年に一度、落下で歩行者に危害を加えるおそれのある部分を全面的に打診などで調べます。ただし共同住宅を報告の対象にしていない自治体もあるので、お住まいのマンションが対象かは確認が必要です。

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浮き・欠損・ひび割れで直し方が変わる

マニュアルは症状ごとに直し方を分けています。下地が健全なら、ひび割れや欠損はタイル部分張替え工法が一般的です。

◆欠損(タイルが欠けている・落ちている)
⇒ タイルを接着モルタルごと剥がし、コンクリートや錆びた鉄筋を直してから、モルタルを塗り直して張り替えます。

◆浮き・剥離
⇒ ドリルで穴をあけてエポキシ樹脂(接着剤)を注入し、ステンレスのアンカーピンを差し込んでコンクリートに固定します。これが「アンカーピンニング」です。

◆ひび割れ
⇒ タイル自体が割れているだけなら、撤去して張り替えるのが一般的です。
⇒ コンクリートのひび割れが原因のもの(0.2mm程度以上)は、タイルを剥がしてコンクリートのひび割れを樹脂注入工法などで直し、新しいタイルで戻します。

張り替えのとき、コンクリートの表面を粗くする「目荒し」をしないと十分にくっつかず、浮きや剥落が再発するおそれがあるそうです。見積書の張替えの項目に下地処理が入っているか、見ておくと安心です。

浮きの補修は浮いている層と張り方で選ぶ

タイルの壁は、コンクリートの上にモルタルを塗り、いちばん外にタイルが付いています(張り方によって層の数が違います)。マニュアルによると、どの層とどの層の間で浮いているかで工法が変わります。

まず確かめるのは、コンクリート自体が傷んでいるかどうか。傷んでいれば、タイルの浮きを留めるだけでは解決せず、コンクリートの補修も含めた工事が必要です。

そのうえで、主な使い分けは次のとおりです。

・コンクリートと下地モルタルの間などの浮き(タイルそのものは浮いていない)
⇒ 樹脂注入工法や、注入口付きアンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法。注入口付きのほうが穴の数を減らせます。

・タイルそのものの浮き、下地モルタルの無い張り方での浮き
⇒ タイルの真ん中に穴をあけてピンを打ち、樹脂で固定する「タイル固定工法」など。穴にはタイルと同じ色のキャップをはめて、補修跡を目立たなくできます。

ここで効いてくるのが、新築時の張り方です。マニュアルでは例として、昭和50年代頃までのマンションは下地モルタルの上に張る「後張り工法」、昭和60年代以降は下地モルタルを塗らずにコンクリートに直接張る「直張り工法」が挙げられています。上の1つ目(樹脂注入など)は主に後張り向けで、直張りには適当でない場合があります。

張り替えには補修用タイルの準備期間がいる

広い範囲が傷んでいるときは、既存のタイルを剥がして新しいタイルに張り替えます。

このとき困るのが、同じタイルが手に入らないことです。マニュアルによると、新築時のタイルの予備は十分に残っていないことが多く、既存に近いタイルを新たに焼いて作るのが主流だと書かれています。色や質感を合わせるために試作を何度か繰り返すことも少なくありません。

工事の直前に「タイルが間に合わない」とならないよう、張替えが多そうなら早めに見本を作ってもらうのがおすすめです。

なお仕様書では、下地モルタルを残して張り替える「タイル部分張替え工法」は1か所0.25㎡程度以下が目安です。下地モルタルごと撤去する場合は「タイル張替え工法」になります。

剥落防止に重点を置く全面改修もある

浮いた所だけを直すのではなく、まだ傷んでいない部分も含めて外壁全体の剥落を防ぐという考え方もあります。マニュアルは、予防保全と剥落防止の確実性を高める方法として、次のような全面的な改良工事を挙げています。

・ピンネット工法(アンカーピンと繊維ネット、ポリマーセメントモルタルを組み合わせる)
・透明樹脂塗り工法(アンカーピンで補強したうえで透明な樹脂を塗り重ねる)
・パネル被覆工法(GRCやアルミのパネルで覆う)

まだ浮いていない部分の予防も兼ねる、という位置づけです。

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補修方法は調査の結果で決まる

タイル剥離の補修は「留める」か「張り替える」か。その選び分けは、症状・浮いている層・新築時の張り方という調査の結果で決まります。

マニュアルでは、タイル張りの改修は12~15年周期が目安で、外壁の修繕と同時に行うとされています。報告書に「浮き」の文字があったら、どの層の浮きなのかを調査した会社に聞いてみてください。

余談ですが、仕様書には「雨や雪、強風が予想される日」や「気温が5℃以下になりそうな日」はタイルを張らない、という決まりもあります。タイルは意外と天気にうるさいんです(^^)

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