先に答えを言います。大規模修繕工事の前に買うか後に買うかより、そのマンションの「修繕のお金の予定」を書類で確かめることの方が大切です。

工事の前でも後でも、買えばあなたも修繕積立金を納める区分所有者の一人です(国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」第25条。国が示すひな形)。実際の扱いは各マンションの規約によります。

気にしたいのは、積立金が足りているか、値上げや一時金の予定がないか、という点です。

この記事では、工事の前と後で何が違うのかと、買う前に確かめたい5つの項目をまとめます。

工事の前に買うか後に買うか

まずは、工事の前に買う場合と後に買う場合で、気にしたいことを比べてみます。

工事の前に買う場合

国の標準管理規約(ひな形)では、修繕積立金は一定年数ごとに計画的に行う修繕などに充てるお金です(同第28条)。実際の扱いは各マンションの規約によります。

ただ、積立金のほかに、修繕のときに一時金を集める、または金融機関から借り入れることを前提にした積立方式を採っているマンションもあります(国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」)。

国の令和5年度の調査では、長期修繕計画で予定した額より実際の積立額が少ないマンションが、回答の36.6%ありました(国土交通省「令和5年度マンション総合調査」)。

工事の直前に買うなら、工事の予定と、一時金や積立金の値上げの予定を確かめておきたいところです。

工事の後に買う場合

工事が終わっていれば、何をいつ直したかを、③で紹介する実施状況の記録で確かめられます(記録が残っている場合)。

一方で、工事のために借入れをしていれば、その返済が続きます。国の標準管理規約(ひな形)では、借入れの返済に修繕積立金を充てられるとしています(同第28条)。実際の扱いは各マンションの規約によります。

次の工事への備えも見ておきたいところです。国のガイドラインには、一般に築30~40年に高額な工事が見込まれるため、計画の見直しで修繕積立金も増える前提でいる必要がある、と書かれています(国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」)。

前に買えば工事の予定と負担の増え方、後に買えば借入れの返済と次の工事への備え。気にする点は違っても、見るものは同じです。今の積立金の状況と、これからの予定。これを次の5つの項目で確かめます。

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買う前に確かめる5つの項目

①と③は、仲介会社の重要事項説明で説明される事項です。②④⑤は、国のひな形にある管理の状況の開示書面に例として挙がっている項目です。

重要事項説明では、修繕積立金の定めや滞納額などを説明することとされています(国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」)。

開示書面は、国の「マンション標準管理委託契約書」(ひな形)の第15条と別表第5にある仕組みです。ひな形では、売主から売却を頼まれた仲介会社が書面で求めると、管理会社が管理組合に代わって管理規約や長期修繕計画書の写しを出し、別表第5の事項を開示するとしています(国土交通省「マンション標準管理委託契約書及び同コメント」)。費用は開示を受ける側から受け取れるとされています。別表第5は例示なので、実際に出てくる項目は各マンションの委託契約によります。管理会社に管理を任せているかどうかでも変わります。ひな形で開示を求めるのは売主側の仲介会社なので、買う側は自分の仲介会社を通じて頼む形になります。

① 修繕積立金の総額とこの部屋の滞納

重要事項説明では、建物全体の修繕積立金の積立総額と、買う部屋の修繕積立金について、滞納があればその額を告げることとされています。金額は、できる限り直近の数字を時点を明示して書くこととされています。管理費の滞納も同じく説明の対象です。

滞納を見るのには理由があります。標準管理規約(ひな形)の第26条では、管理費や修繕積立金の債権は部屋を買った人にも請求できるとしています。前の持ち主の滞納が、あなたに回ってくることがあるわけです。実際の扱いは各マンションの規約によります。

標準管理委託契約書(ひな形)では、売主に滞納があれば、管理会社が仲介会社に清算に必要な措置を求められるとしています。

② 長期修繕計画があるかといつ見直したか

ひな形の別表第5には、長期修繕計画の有無と、作成(見直し)した年月の欄があります。計画が有れば、総会で決議された計画を添付するとしています。

国のガイドラインでは、計画期間は30年以上で大規模修繕工事が2回入る長さ、5年程度ごとに見直して修繕積立金の額も見直す、としています。見直した年月が古くないかも、あわせて見ておきたいところです。

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③ これまでの修繕の実施状況

共用部分の大規模修繕などの実施状況の記録も、重要事項説明の対象です。ただし説明が求められるのは記録が保存されている場合だけです。記録が無いと確かめられれば、仲介会社の調査は果たされたものとされます。

ひな形の別表第5にも、修繕工事の工事概要と実施時期の欄があります。前回の大規模修繕がいつだったかは、次の工事の時期を考える手がかりです。

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④ 工事と積立金・一時金の予定

ひな形の別表第5には、修繕工事の実施予定と、修繕積立金・修繕一時金などの変更予定の欄があります。修繕積立金は、長期修繕計画上の変更予定時期と変更予定額も書くとしています。売主が今払っている修繕一時金の額の欄もあります。

国のひな形の解説では、「予定有」は総会で承認されたか、総会にかけることが決まった場合を指します。理事会で検討されていて、管理会社がそれを把握している段階は「検討中」です。

⑤ 積立方式と借入金の残高

積立方式(均等積立方式か段階増額積立方式か)と、借入金の残高も、ひな形の別表第5に欄があります。

段階増額積立方式は、最初の積立額を抑えて段階的に値上げしていく方式です。国のガイドラインは、こうした将来の負担増を前提とする方式では、値上げの合意ができずに積立金が不足する事例もあるとしています。そのうえで、将来にわたって安定的に積み立てる観点からは均等積立方式が望ましいとしています。段階増額なら、次の値上げがいつかを確かめておくと安心です。

ちなみに同じガイドラインには、購入時にまとまった額の基金(「修繕積立基金」と呼ばれます)を集める方式も載っています。積立金とは別の名前でお金が出てくるので、購入の書類で見かけたら「これのことか」と思い出してください!

まずは仲介会社に管理の書面を頼んでみてください

前に買っても後に買っても、払っていくのは同じ修繕積立金です。値上げ・一時金・借入れの予定は、開示書面(②④⑤)が主な手がかりになります。

気になるマンションが見つかったら、まずは仲介会社に「管理会社の開示書面と長期修繕計画書の写しを見たい」と頼んでみてください(^^)

買ったあとは区分所有者として、修繕の話し合いに関わる立場になります。大規模修繕工事を検討する側になったら、こちらもご活用ください。

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