お住まいのマンションのエレベーター、設置から何年たっているかご存じですか?
外壁や防水の大規模修繕工事と違って、エレベーターの更新は「築25~30年」に一度やってくる、別の時計で動く工事です。この記事では、理事会や説明会でよく出る疑問に、国土交通省の資料をもとに順番に答えていきます。
Q1 大規模修繕工事でエレベーターも直すの?
答えは「12~15年で補修、まるごとの取替えは26~30年ごろ」です。
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインの修繕周期の例では、昇降機(エレベーター)は12~15年で「補修」、26~30年で「取替」と分けて書かれています。補修の対象はカゴ内装・扉・三方枠(出入口の枠)など、取替は全構成機器です(国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」令和6年6月改定)。
つまり、外壁塗装と同じタイミングでエレベーターもまるごと新しくなる、というわけではありません。同じガイドラインは、長期修繕計画の期間を30年以上とし、新築時の計画では経年30年程度で見込まれる昇降機設備の取替えなどを含めた期間以上にする、と説明しています。エレベーターの更新は、計画期間を決めるときに織り込まれる大きな支出のひとつ、というわけです。
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Q2 取替えの時期はどう決まるの?
国の「マンション改修マニュアル」では、修繕周期は26~30年程度で、日常のメンテナンスの状況により実施時期を検討する、とされています。改修時期は使用頻度やメンテナンスの状態で違うものの、設置後25~30年位までに行われている、というのがマニュアルの説明です(国土交通省「マンション改修マニュアル」令和8年3月改訂)。
きっかけになるのが、メーカーからの通知です。マニュアルによると、主要装置の耐用年数は概ね20年が目処とされ、メーカーはその機種の生産終了から概ね20年以上たった機種について「部品供給を停止する通知」を出すようになりました。管理組合はこの通知が届くと更新工事の検討を始めるようになった、と書かれています。
メンテナンスを続けていても、長期間の使用で機器は劣化し、故障の増加や点検の長時間化による利用時間の制限、部品の製造中止といった問題が出てきます。マニュアルは、利用者の安全と安心のためにも更新工事が必要になる、としています。
なお、エレベーターには建築基準法12条3項の定期検査があり、長期修繕計画作成ガイドラインの法定点検の表では、おおむね6か月~1年の間で特定行政庁が定める時期に行うものとされています(内容は地域によって異なる場合があります。同ガイドライン p.63)。エレベーターは国が政令で一律に定期報告の対象としていて、検査は法令に基づく資格者が行い、結果を行政に報告する義務が建物所有者にあります(国土交通省「建築基準法に基づく定期報告制度について」)。定期検査の結果と保守会社の点検記録が、取替え時期を考える材料になります。
Q3 工法は何種類あるの?
マニュアルが挙げる改修工法は、大きく3つです。
・全撤去リニューアル工法:構成する全ての部品を撤去して新しいものに取り替える
・準撤去リニューアル工法:三方枠や敷居など、建物に固定されていて使える部品は再使用する
・制御リニューアル工法:制御に関する機器を入れ替える。主に機械室の機器を交換する
マンションのロープ式エレベーターの1回目の改修では、工期が短く工事費も比較的安価な制御リニューアル工法が広く採用されるようになった、とマニュアルは書いています。近年の制御リニューアルでは、制御盤や電動機の更新に加えて、法改正に伴う耐震性・安全性の向上、バリアフリー仕様、かご内装の刷新といったオプションを組み合わせたバリエーションをメーカーが用意しているそうです。
一方で、油圧式のエレベーターを機械室なしのロープ式に更新する場合などは全撤去リニューアル工法になります。全撤去は確認申請が必要になるのが通常で、他の工法に比べて工期が長くなり工事費も上がります。昇降路(シャフト)の形状によっては実施できないこともあるので、メーカーへの確認が必要です。
Q4 工事中、エレベーターは何日止まるの?
いちばん気になるところですよね!! マニュアルの説明では、制御リニューアル工法は他の工法より工期が短いといっても5~20日程度かかります。
そこで最近は、夜間や休日など作業していない時間帯はエレベーターを使えるようにする提案をメーカーがするケースがあり、現場ごとに工程を組んで提案されています。この場合の完全停止期間は4~7日程度ですが、工事ごとに検討するため幅があります。全体の工期は若干長くなり、工事費は上がります。1990年代後半以降のインバーター制御の機種では、一部で巻上機やモーターの交換が不要で、夜間は停止なしでリニューアルしたケースもある、とのことです。
マニュアルは、住みながら行う更新工事では、管理組合がアンケート等で居住者の状況を把握し、通院している方や自力で階段の昇降が困難な方がいる場合などは、工事の時期や停止期間を早めに知らせて余裕をもって準備することが重要、としています。
Q5 古いエレベーターの安全装置はどうなるの?
マニュアルによると、過去の事故や地震被害をもとに2009年と2014年に建築基準法施行令が改正され、エレベーターの設置基準が変わりました。2009年の改正で義務化されたのが、ドアが開いたまま走行する「戸開走行」によるはさまれ事故を防ぐ「戸開走行保護装置」と、地震の揺れを感知して最寄り階で止めてドアを開く「地震時管制運転装置」です。2014年の改正では、つり合おもりの脱落防止構造の強化などが定められました。
ここで大事なのは、改正前に設置されたエレベーターの扱いです。マニュアルの説明では、確認申請が必要な工事ではこの基準に従う義務がある一方、確認申請が求められなければ、改正前の既存エレベーターにこれらの基準は適用されず、既存不適格のまま是正しないで改修できます。長期修繕計画作成ガイドラインも、建築確認が必要な昇降機の設置・改修工事では戸開走行保護装置・地震時管制運転装置の設置等が義務付けられている、と注意書きをしています。
そのうえでマニュアルは、改修の機会に是正しなければ今後二十数年、従前の安全基準のまま乗り続けることになるとして、二十数年に一度のエレベーター改修を、既存不適格を是正して安全なエレベーターに再生するチャンスと考えることが望まれる、としています。停電時にバッテリーで最寄り階まで自動運転する「停電時自動着床装置」も、あわせて検討すべき装置として挙がっているので、見積の項目に入れてもらうと安心です。
Q6 総会の決議と確認申請は?
標準管理規約のコメント(国のひな形)では、計画修繕工事に関し、エレベーター設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる、と整理されています。実際の扱いは各マンションの管理規約と、工事の具体的な内容による個別の判断になります(国土交通省「令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)」コメント)。
確認申請については、国の手続き資料が、昇降機を取り替える場合等については建築設備としての確認申請を必要とする、としています(国土交通省「マンション改修に関する建築基準関係規定上の手続き」)。工法によって要否が変わるので、見積の段階で施工会社やメーカーに「この工法で確認申請は必要か」を聞いておくと安心です。
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余談 機械室が「防災倉庫」になることも
マニュアルには、油圧式から機械室なしのロープ式に改修すると機械室が不要になり、防災倉庫など他の用途に転用できるメリットがある、と書かれています。新築ではもう油圧式はほとんど採用されなくなったそうです。更新を機に、機械室がひとつ空く。エレベーターの工事で収納が増えるというのは、ちょっと意外ですよね(^^)
エレベーターの更新は、外壁や防水の大規模修繕工事とは別の周期でやってくる、長期修繕計画の中でも大きな工事です。まずは設置年と、メーカーから部品供給に関する通知が届いていないかを確かめるところから始めてみてください。
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