「外壁塗装って、要するにペンキを塗り直すだけでしょう?」
理事会でこう聞かれたら、答えは半分正解で、半分違います。国土交通省のマンション改修マニュアルを読むと、大規模修繕工事の外壁塗装は、塗る前の下地づくりと、古い塗膜の扱いと、上塗りの塗料選びまで含んだ工事だと分かります。
この記事では、外壁塗装にまつわる3つの思い込みを順にほどきながら、塗料の選び方と塗り替えの周期、色を変えるときの注意点までまとめました。
思い込み①「外壁塗装は色を塗るだけ」
実際には、塗る前の作業が先にあります。
マニュアルでは、外壁塗装(塗装仕上げ改修工事)の中身を次の順番で説明しています。
・表面の清掃とケレン(汚れや傷んだ部分を落とす作業)
・外壁やコンクリート壁の劣化・損傷箇所の修繕
・塗装面の段差修正などの下地調整
・塗装
つまり、傷んだところを直して、表面の段差を整えてから、やっと塗料の出番です。マニュアルには、外壁塗装はふつう躯体(建物の骨組みのコンクリート)の修繕と同時に行うとあります。
塗る場所も、外から見える壁だけではありません。共用廊下・階段やバルコニーのコンクリート壁、手すり壁、上げ裏(見上げたときの天井面)も対象として挙げられています。
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思い込み②「古い塗膜の上に重ねればいい」
重ねて塗れるかどうかは、古い塗膜の付着の状態しだいです。
マニュアルによると、今の主流は、既存の塗材の上に微弾性フィラー(下地を整える厚めの塗材)を塗り、上塗材で仕上げる工法です。ただし、古い塗材の付着力が著しく落ちている場合は、剥がしてから塗り直す必要があります。
やっかいなのは、壁一面が同じ状態ではないこと。マニュアルは、実際には健全な部分と脆弱化している部分が混在していると注意しています。付着の強さが目安の数値に満たなければ、古い塗膜の除去を検討することになります。
古い塗膜の処理には、次の3つのグレードがあります。
・全面除去: 高圧水洗やケレンで既存の塗材を全面に取り除く
・準除去: 劣化・脆弱・付着不良の部分だけ取り除く
・洗浄: 表面のゴミや塵、劣化した上塗材を洗い落とす
国の長期修繕計画作成ガイドラインの修繕周期の例でも、外壁塗装は12~15年で「塗替」、24~30年で「除去・塗装」と、2段構えになっています。参考の例では、24~30年目に古い塗膜を取り除く組み立てです。
思い込み③「塗料は高いものほど正解」
塗料は高ければいいのではなく、建物に合うものを選びます。
まず知っておきたいのは、耐久性を左右するのは一番上の層だということ。外壁の塗材は、主材の上に上塗材を重ねる「複層塗材」と、主材だけの「単層塗材」に分かれます。マニュアルは、上塗材が直接風雨や日射にさらされるため、塗材の耐久性は上塗材の性能に大きく依存するとしています。
上塗材の樹脂の種類と耐久性の関係は、一般に次の順番です。
アクリル樹脂系 < ポリウレタン樹脂系 < アクリルシリコーン樹脂系 < フッ素樹脂系
右へ行くほど耐久性が高く、価格も高くなります。
では何を選ぶか。マニュアルには、最近は性能とコストのバランスからアクリルシリコーン樹脂系が多く採用されているとあります。一方で、建物の形や部位の都合で塗り替えが簡単でない場合は、フッ素樹脂系や無機系といった上位グレードを選ぶ場合もあるとされています。
建物の状態で選ぶ塗料もあります。
・躯体にひび割れが目立つ → ひび割れに追従しやすい高弾性塗材
・ひび割れや外壁からの漏水がある → 防水性能の高い弾性系塗材(外壁用塗膜防水材)
後者は、塗り替えと防水を一度に兼ねられる効率的な工法として紹介されています。
ちなみに、上塗材には水性系と溶剤系があり、臭いの問題や工事中の扱いやすさから、近年は水性系が主流だそうです。工事中の”臭い”が気になる居住者の方には、ちょっと安心できる話ですね(^^)
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塗り替えの周期は12~15年が目安
マニュアルは、塗装仕上げ改修工事の修繕周期を12~15年周期としています。ガイドラインの修繕周期の例も同じ12~15年です。
ただし、これはあくまで参考の数字。ガイドラインは、修繕周期はマンションの仕様や立地条件に応じて設定し、見直しの際は調査・診断の結果に基づくことが必要としています。
お金の面でも外壁は大きな項目です。国土交通省の令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査では、建築系工事の内訳のうち「外壁関係(外壁塗装・外壁タイル・シーリング工事)」が49.4%で最も高い割合でした。
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色を変えるなら早めに相談を
マニュアルでは、外壁の色を大きく変えるときは、事前に管理組合と協議し、居住者の意見も聞くことが必要とされています。
もうひとつ見落としやすいのが景観のルール。マニュアルによると、地域によっては景観条例で使える色に制限があり、色彩の変更(同じ色への塗り替えも含む)で届出が必要になる場合があります。
福岡市では、景観法の届出制度で「外観を変更することとなる修繕若しくは模様替え又は色彩の変更」を届出の対象にしています。ただし、通常の管理行為は対象外です。届出が必要な規模は計画地のゾーンで変わり、都市景観形成地区では通常の管理行為を除くすべてが対象になります。お住まいのマンションが当てはまるかは、市の都市景観室で確かめておくと安心です。
前回の塗料をご存じですか?
大規模修繕工事の外壁塗装は、色を塗るだけの工事ではありません。下地を直し、古い塗膜の状態を見極め、建物に合う上塗材を選ぶ。ここまでが外壁塗装の中身です。
お住まいのマンション、前回の外壁塗装でどの塗料を使ったか、ご存じですか? 管理組合で保管している前回の工事の書類を、次の工事の前に一度めくってみてください。
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