3万円と6万円。

同じ1億円(税抜)の大規模修繕工事でも、契約書の金額の書き方ひとつで、貼る収入印紙がこれだけ変わることがあります。

先に結論です。工事請負契約書の印紙代は契約書に書かれた金額で決まり、令和9年3月31日までに作る契約金額100万円超の建設工事の契約書は軽減された税額になります。そのうえで「消費税の書き方」「契約書の通数」「追加工事」「貼り方」の4つで金額や手間が変わります。

この記事では、国税庁のタックスアンサーとパンフレットをもとに、契約前に管理組合が知っておきたいことをまとめました。

印紙代は契約書に書かれた金額で決まる

工事請負契約書は、印紙税でいう「第2号文書(請負に関する契約書)」にあたります。税額は、契約書に記載された契約金額で決まります。

なお、課税されるかどうかは書類の名前ではなく、書かれている内容で判断されます(国税庁 No.7100)。「注文請書」や「覚書」という名前でも、契約の内容が書かれていれば対象になりえます。

軽減後の税額はこの表のとおり

建設工事の請負契約書のうち、契約金額が100万円を超え、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成するものは税額が軽減されています(国税庁 No.7108)。マンションの大規模修繕工事に関係しそうな金額帯を抜き出すと、こうなります。

  • 500万円を超え1,000万円以下 … 5千円
  • 1,000万円を超え5,000万円以下 … 1万円(本来は2万円)
  • 5,000万円を超え1億円以下 … 3万円(本来は6万円)
  • 1億円を超え5億円以下 … 6万円(本来は10万円)
  • 5億円を超え10億円以下 … 16万円

100万円以下の契約書は軽減の対象外で200円、1万円未満なら非課税です。

ここでいう「建設工事」は、建設業法で定める土木建築に関する工事の全般です(国税庁パンフレット)。国土交通省の業種区分を見ると、塗装工事や防水工事(シーリング工事を含む)も建設工事の種類に入っています。

一方で、建物の設計だけを請け負う契約書は軽減の対象外です。ただし工事と設計を1通の契約書にまとめた場合は、全体が軽減の対象になります。

期限の令和9年3月31日は、もともと令和6年3月31日までだったものが延長された日付です。その先がどうなるかは、税制改正を待つことになります。

▼ 関連記事
大規模修繕工事の費用相場|1戸あたりの目安と見積の比べ方

契約前に確かめたい4つの注意点

①消費税の書き方で税額が倍になることも

冒頭の「3万円と6万円」の話です。

消費税額が「うち消費税額〇〇円」と区分して書かれているか、税込と税抜の両方が書かれていれば、消費税分は印紙税の記載金額に含めません(国税庁 No.7124)。ところが「〇〇円(税込)」「消費税10%を含む」とだけ書くと、税込の金額がそのまま記載金額になります。

たとえば税抜1億円・消費税1,000万円の工事で計算してみます(軽減後の税額)。

  • 「1億1,000万円 うち消費税額1,000万円」… 記載金額1億円 → 3万円
  • 「1億1,000万円(税込)」… 記載金額1億1,000万円 → 6万円

ちょうど区切りの金額をまたぐと、こうした差が出ます。なお、この扱いは消費税の課税事業者が作る契約書の場合です。

②2通作れば2通とも印紙がいる

契約書は当事者がそれぞれ1通ずつ持つのが一般的です。国税庁 No.7120によると、「写し」「副本」と書いてあっても、双方の署名押印があるなど契約の成立を証明するものなら、2通とも課税されます。

逆に、正本をコピー機でコピーしただけで署名押印のないものは、単なる写しなので課税されません。

また、2人以上で作った契約書は、作成者全員が連帯して印紙税を納める義務を負います。どちらの1通に誰が貼るのか、契約の前に施工会社と決めておくと安心です。

③追加工事の変更契約書にも印紙がいる

工事が始まってから数量が増え、変更契約書を交わすことがあります。この変更契約書も軽減措置の対象です(国税庁パンフレット)。元の契約書が特定できる書き方で増額分を書けば、増えた金額だけが記載金額になります。減額の場合は記載金額のない文書として扱われます(国税庁 No.7123)。

変更後の総額だけを書くと、その総額が記載金額になるので気をつけたいところです。

④貼り忘れと消印忘れは高くつく

印紙は貼って終わりではなく、印章か署名で消印して納付が完了します。

貼らなかった場合は、本来の税額と合わせて3倍の過怠税がかかります(国税庁 No.7131)。調査を受ける前に自分から申し出れば1.1倍に軽くなります。消印を忘れた場合は、その印紙の額面と同じ額の過怠税です。

1億円の工事なら3万円の印紙が9万円になる計算です(-_-;)

▼ 関連記事
大規模修繕工事の流れを7ステップで解説|準備から竣工まで3~5年

電子契約なら印紙はかからない

紙の契約書に代えて、電子署名を付けた電子データをメールで送る方法なら、印紙税はかからないとされています。国税庁は、建設工事の注文請書を電子データで送る事例について「電磁的記録は文書に含まれません」と回答しています。

電子契約に対応しているかどうかは、見積の段階で施工会社に聞いておくとよいでしょう。

余談 印紙を貼りすぎたら

最後に小ネタをひとつ。

金額を間違えて多く貼ってしまった印紙は、税務署で確認を受ければ、還付の対象になる場合があります。ただし文書を作ってから5年を過ぎると対象外です(国税庁 No.7130)。

使わなかった収入印紙は、汚れや破れがなければ郵便局で別の額面と交換できます。手数料は1枚5円で、現金には換えられません。理事会の金庫に眠っている印紙があれば、思い出してあげてください(^^)

まとめ 契約書の案が届いたら

印紙代は「契約書の金額×軽減後の税額表」で決まり、消費税の書き方・通数・変更契約・消印の4つで差が出ます。総会で工事が決まったら、契約書の案を受け取った段階で金額の書き方を一度確かめてみてください。

▼ 大規模修繕工事のご相談・お見積りは無料です
福岡で大規模修繕工事をご検討中の管理組合様・オーナー様は、株式会社アストまでお気軽にご相談ください。
お問い合わせフォームはコチラ
お電話でのご相談: 092-812-6411(平日 8:00〜17:00)

▼ 関連記事
大規模修繕工事の決議要件|普通決議とされる工事と総会の定足数
大規模修繕工事の確認申請|要否の分かれ目と注意したい5つの工事
大規模修繕工事の借入|積立金不足で使える公的融資と5つの手順
大規模修繕工事の流れを7ステップで解説|準備から竣工まで3~5年
大規模修繕工事の流れ