「建物診断」「劣化診断」「調査・診断」。大規模修繕工事の準備で、いろいろな呼び名で出てくる言葉です。
国の長期修繕計画作成ガイドラインには、国が示す管理規約のひな形「標準管理規約」のコメントが引かれていて、そこでは「劣化診断(建物診断)」と並べて書かれています。長期修繕計画の見直しと修繕工事の前提として、管理組合として行う必要があるという整理です。ひな形なので、実際の扱いはお住まいのマンションの管理規約によります。
ガイドラインも、長期修繕計画の前提として、工事をするかどうかや中身は事前の調査・診断の結果で判断するとしています。この記事では、理事会で出てきそうな5つの疑問に、国の資料をもとに答えていきます。
Q1 建物診断では何を調べるの?
建物の今の傷み具合と、その原因です。
国土交通省のマンション改修マニュアルによると、竣工図書や修繕記録のチェック、現地での観察・調査、詳細診断などを行い、建物各部の劣化・損傷の程度や不具合、建物の性能を把握します。
大事なのは「なぜ傷んだのか」です。経年劣化なのか、建てたときや前回の工事の設計・施工の不備なのか。マニュアルは、これで直し方や費用負担が変わるため判定が重要だとしています。
工事まで待つと危ない箇所が見つかれば、その対応も検討することになります。
Q2 どこまで詳しく調べるの?
診断には段階があります。ガイドラインには、建築研究所のマニュアルをもとにした次の分類表が載っています。
・予備調査・診断: 図面などの資料調査、目視調査、アンケート調査で現状をつかみ、本調査が要るかを判断
・1次診断(簡易診断): 資料調査、目視調査、軽微な機器で劣化の危険性を判断
・2次診断: 非破壊試験・微破壊試験で修繕の要否を判断(主に共用部分)
・3次診断: 局部破壊試験を伴う、より詳細な診断(主に共用部分と一部の専有部分)
2次・3次をまとめて「詳細診断」と呼びます。1次診断は劣化を大まかにつかむもの、詳細診断は劣化の原因を特定して工事の要否や内容を決めるためのもの、という役割分担です。
ガイドラインによると、長期修繕計画の見直しのためだけに行うなら、著しい劣化がないかぎり目視調査などの簡易なものにとどまります。一方、工事のために行う場合は、劣化の状況に応じて非破壊試験、破壊試験と詳しくなっていきます。
Q3 いつやるのがいいの?
目安は工事予定の2年程度前です。
マニュアルは、資金計画や合意形成の運営面からみて、長期修繕計画に定めた工事時期の2年程度前に行うのが望ましいと考えられる、としています。
もうひとつの節目が長期修繕計画の見直しです。ガイドラインは5年程度ごとの見直しを前提にしていて、その際も調査・診断を行い、結果に基づいて見直すとしています。
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Q4 費用は管理費と修繕積立金のどちらから?
国のひな形(標準管理規約)では、工事の前提として行う診断は、原則として修繕積立金からです。
ガイドラインに載っているコメントでは、こう整理されています。
・工事の前提としての劣化診断 → 修繕工事の一環なので、原則として修繕積立金から取り崩す
・長期修繕計画の作成・見直しのための劣化診断 → 管理組合の財産状態などに応じて、管理費・修繕積立金のどちらからでもよい
ちなみに、法令に基づく点検や保守契約の点検は管理費、という区分も同じガイドラインに表で示されています。「点検」と「診断」でお財布が分かれるのが基本、というわけです。
実際の扱いは、お住まいのマンションの管理規約で確かめてください。
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Q5 管理組合は何を準備すればいい?
まず図面と過去の記録を揃えることです。
ガイドラインは、新築時の設計図書、過去の修繕工事の図面や書類、法定点検の報告書、以前の調査・診断の報告書などが大変有用だとしています。整っていると専門家の作業が減り、負担する費用も削減できるとまで書かれています(^^)
平成13年8月1日以降に完成したマンションなら、マンション管理適正化法にもとづいて設計に関する図書が交付されているはずなので、保管を確認してください。
あわせて、マニュアルが重要としているのが次の3つです。
・区分所有者へのアンケートで、困りごとや要望を集める
・調査に合わせて、問題箇所の見学会を開く
・診断が終わったら、結果の説明会を開く
なお、ガイドラインでは、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震のマンションについて、劣化診断とは別に耐震診断を行い、結果により耐震改修を検討することが必要とされています。
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5つの答えをもう一度
・Q1 傷み具合と原因(経年劣化か施工不備か)を調べる
・Q2 予備調査から1次・2次・3次診断まで段階がある
・Q3 工事予定の2年程度前が望ましい
・Q4 工事の前提の診断は原則として修繕積立金から
・Q5 図面と過去の記録を揃えると費用の削減にもつながる
最初の一歩は、管理組合の書庫で設計図書と前回の工事の記録を探してみることです。
株式会社アストは、トップページにあるとおり調査・診断から設計・施工まで一貫して対応しています。
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